操体法はじめに

身体の不調というのは、身体の発するメッセージです。
飲みすぎや食べすぎ、偏食、あるいは健康の為にとしているサプリメントの採り過ぎ。また、同じ姿勢や、目を酷使するとといった不自然な行動。
ストレスを始め、様々な心への負荷。
そういったものが重なりはじめた時、具体的に言い辛い不快感を始め、疲れがとれない、だるいといった不調をメッセージとして送ってくるのです。

そのメッセージを無視したまま過ごしたらどうなるでしょう。
それは体の表面や、骨格に現れてきます。骨盤が捩れると体液の循環が悪くなり、むくみやすくなります。また、脂肪がつきやすくなり、太りやすくなります。昔はなかった体型の変化もそうした不調の蓄積によるものもあります。
恐ろしい事ですが、そこに人間の体の素晴らしさがあります。
逆に骨格を修正する事で、不調の解消・緩和が可能なのです。

元来操体法を始め、東洋医学は古来、「未病を治す」と表現されるように、病気になる前に体表に出た異常感をもとに治療を施し、病気にならない体作りを目的としています。操体法は、この体作りを目的としながらも、すでに病気がある人にも充分に治療効果を発揮します。

操体法の基本は緩みです。
不調を訴えるほどになってしまった身体は緊張し、強張りきってきます。
それをリラックスさせて、自然な状態に持っていってあげる。それが基本です。
その自然な状態に持っていくのに、何か体に強い衝撃がかかると思われるかもしれませんが、人間は自分の体を調整する機能を持っています。操体法はその手助けとお考えください。

操体法のもたらすもの

「操体法がどんな疾患に効くか?」と問われたら、骨折や、激しい痛みを伴う急性疾患、先天的な疾患、重篤な神経麻痺、組織が完全に変形してしまったことによる疼痛・運動障害、裂傷以外は何にでも効くと答えられるでしょう。
人の体は常に悪いところを治そうとしています。 
どんな病気でも体は治ろう治ろうとしています。
なかなか治らないのは、何か原因があるのです。
その原因となるのが「息」「食」「動」「想」「環」の乱れなのです。

操体法によって、「息」「動」「想」の乱れによる身体の不調は改善することができます。
これによって生きている感覚の全てに快感が戻ってきます。
それはリラックスした身体がもたらす状態でもあります。
しかし、それだけでは完全ではありません。
「食」と「環」は個人の努力の範囲となります。
この五つの乱れが納まった時に、自然に安らいだ日々があなたを迎えることでしょう。

「息」とは、呼吸のこと。


体調がよく、気持も落ち着いて、筋肉に無駄な力が入っていないとお腹で深い呼吸ができるものです。
お腹で大きい呼吸をしていると、横隔膜が充分に動き、内臓の動き・血行が良くなります。

「食」とは、飲食のこと。


どのような食事を取るかがいかに重要なことかは、もう言わずもがなでしょう。
最低、暴飲暴食には注意しておきましょう。

「動」とは、動きのこと。


いつも腰を落として、肩の力を抜いて自然な動きができれば(日本舞踊のような動き)健康で、骨盤・背骨の歪みも起こさずにいられるでしょう。
しかし実際は、誰でも知らず知らずのうちに身体の使い方に癖があります。

「想」とは、精神の働きのこと


東洋医学は心の働きと身体の働きは一体と考えます。
怒り(イライラ、セカセカ、ウツウツ)は「肝」をやぶり、喜びすぎは「心」をやぶり、思い(考えすぎ)は「脾」をやぶり、悲しみは「肺」をやぶり、恐れ(驚き)は「腎」をやぶる、といいます。
つまり、精神活動が内臓に与える影響を教えています。
逆もまた真なりで、肝臓が疲れると怒りっぽくなり、腎がくたびれると物に怯えやすくなります。

「環」とは、環境のこと。


住環境、仕事場の環境、人間関係、さらに場を拡げて自然環境、
これも人間の健康に大きな影響があります。

操体法理論

自分で動かしてみて気持の良いポーズを探し出し、そこでゆっくりとした呼吸をし、呼気と同時に脱力してください。
(あくび、伸びをした後ストンと力を抜く感じ)
すると動きの悪かったところも良くなっています。
それが自然に備わった調整機能です。
しかし体調不良状態が長かった人は(がまん強かった人)、快感覚が分からなくなっていることが多々見られます。
ですから、できるだけ大きな関節(股関節)を左、右と動かしてみて左右差を確認してもらいます。
ただ、こちらは個々で差がありますが忘れてはならないのは快感覚はその人自らが感じることに意味があります。

快がわかれば、不快も分かると思います。
そうなればもう回復は始まったようなものです。
一つの関節を動かすと、その影響は全身に波及します。
例えば、足首を回してみてください。
その筋肉の動きは、膝を通って股関節に感じるでしょう。

股関節が動くということは、腰の筋肉に影響があり、腰が動くということは、背骨の脇を通る脊柱起立筋が伸び縮みし、それは首から後頭部を刺激しているのです。
首が変われば当然腕の筋肉も変わります。 

このように全身の筋肉・神経・皮膚・血管は連動しており、足だけ、顔だけというように、部分部分を切り離すことはできないのです。
だからこそ始まりの快感覚を知っていただきたいのです。