血圧測定の結果、収縮期血圧が140mmHg以上
または拡張期血圧が90mmHg以上を高血圧とみなされます。

高血圧自体は病気ではありません。
しかしサイレントキラーと呼ばれるように、放置していると自覚がないまま進んでしまい、血管が硬くなる動脈硬化症になったり、のちに虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞)や脳卒中などの発作を起こすおそれがあります。
現在、日本人の780万人以上が治療を受けているといわれています。
俗に「三主徴候」と言って、めまい・肩こり・頭痛が最も多い愁訴といわれていますが、それも特有の症状とは言えませんから、症状から高血圧を特定することはできません。
そのため定期的に血圧を測定するしか見つけ出す方法はありません。

高血圧症には他の病気等によっておこる原因のはっきりした二次性高血圧(症候性)もありますが、それは全体の1割程度で、圧倒的多数は原因のわからない本態性高血圧(一次性高血圧)です。

本態性高血圧の原因はまだ分からないものの、以下のような因子があると血圧が上昇しやすいことは知られています。

  1. 体質・遺伝(高血圧・脳卒中の家系)
  2. 塩分の過剰摂取
  3. 肥満
  4. ストレス
  5. 急激な温度差(寒冷)

治療法は病院に行けば当然、降圧剤の服用となりますが、それと並行して自助努力も必要となります。

  • 食塩摂取量を制限する
  • 適正体重を維持する
  • アルコール摂取量は適量にする
  • 適度な運動療法をする
  • 禁煙
  • 脂質(飽和脂肪酸やコレステロール)の摂取量を制限する

どんな病気も同じですが、生活習慣の制限というのは、なかなか大変なものですね。

東洋医学的高血圧治療

高血圧に対する鍼灸治療は、高い数値で固定されてしまった患者さんには正直言って難しいしいところですが、まだ変動があるくらいでしたら効果が期待できます。

一般的に高血圧症に効果があるとされているツボとして有名なのは、

人迎(じんげい=喉の血管拍動部)
曲池(きょくち=肘の外側曲がり角)
足三里(あしさんり=膝蓋骨下の外側のくぼみから3横指下)
懸鐘(けんしょう=外くるぶしから3横指上)


があります。
この4穴を基本として、頭のてっぺんの“百会”や背部兪穴を症状に合わせて組み合わせます。
個人的には親指と人差し指の間にある“合谷”と、後頭部の直下、頸椎2番にある“天柱”というツボを重要視しています。

試みに手をギュッと握りしめてみてください。
手の緊張が腕・肩・頸から頭まで伝わっているのが感じられることでしょう。
そして心拍数も血圧も上がっているはずです。
頭の疲れがなかなか自覚できないように、手の過緊張や疲労も気が付かないものです。
しかし「手に汗握る」という表現もあるように、緊張・興奮しているときには知らず知らず手に力が入っているのです。
そして手の疲労、なかでもとりわけ親指と人差し指の運動をつかさどる橈骨神経の過緊張は頸椎の歪みをもたらします。
なにしろ左右同じように力の配分ができている人なんてほとんどいなく、利き腕のほうが圧倒的に強いですからね。
結果、頸の筋肉の疲労にも偏りができるわけです。
首が歪めば、次には当然のように頭の血流に影響が出ます。
いわゆる「頭に血が上る」なんていう症状の方は、うまく下がらないから問題なわけですね。
うまく下がらないのは頸に何らかの歪みが生じている可能性は高いでしょう。
首の緊張を緩めるためにはまず手の脱力から、そのために“合谷”のツボは有効です。
そして頭の血流の急所である頸椎2番“天柱”
全身で一番血液を必要とする頭の血流が変われば、体中の血液循環が改善されますし、今より少しはリラックスも上手になれます。

治療イメージ

さて、他に高血圧に効くツボとして面白いところでは足の第一趾(親指)の第二関節(付け根)の横紋(シワ)中央にお灸をすえるというのも伝えられています。
熱そうですし、靴を履いて蒸れるとお灸の跡がかぶれそうなので、私は多用しませんがどうしても効果が出ないときには、この名前の無いツボも使用します。

また操体法をお教えしますので、ご自分で日常的にやっていただきます。

高血圧の方は筋肉が全体的に強ばっている方が多いですので、操体法で全身的に緩めることは有効です。
もちろん腹式呼吸や瞑想、ヨガ、気功など自律神経が安定するものでしたら、なんでも良いと思います。
やりやすく続けられることをされるのが一番です。

お食事も“腹7分目”位を目安にしていると、体重は増えません。
ウエイトコントロールは高血圧の進行を遅らせる確実な方法です。

鍼灸治療は胃腸の調子を整えますので、無理なく体重制限ができますよ。

高血圧の治療に鍼灸という選択肢も考えてみてください。

付記1

全日本鍼灸学会が鍼灸治療で血圧が下がるというデーターを発表しています。
http://www.jsam.jp/pdflib/kiso_p7.pdf#search=’%E9%AB%98%E8%A1%80%E5%9C%A7+%E9%8D%BC%E7%81%B8′

血圧を下げることを目的とせず、腰痛や関節痛などの主訴に対する治療とともに全身調整を目的とした治療(随証治療)を週1回、9週行ったところ、高血圧群においてのみ血圧が下がりました。
すなわち異常領域にある場合のみ、治療に反応するということです。
正常領域にある場合、その状態が維持されるように作用します。ここに薬とは異なる効果があります。
その機序として心機能のパラメータの変化から見ると交感神経活動の抑制と末梢血管抵抗の低下が関与したことが示唆されました。

付記2

NHKためしてガッテンで、動脈をマッサージすることで高血圧が改善する可能性があることを紹介していました。
動脈のマッサージで血圧が下がる理由
動脈のマッサージとは、筋肉をねじることで筋肉と骨の間にある動脈を刺激するものです。
動脈の内皮細胞が刺激を受けて伸縮すると、一酸化窒素が生まれて血管が拡張され、その結果血圧が低下します。

血圧低下に効果があるマッサージのやり方
①指
指を1本ずつにぎり左右に回すようにほぐします。片手で1分程度です。
②腕
左腕のマッサージをする場合は、右の手のひら全体を左腕に押し当てます。そして左腕の筋肉を骨に擦りつけるようなイメージでねじります。手首から肩にかけて2分程度行い、逆の右腕も同じように行います。
③足
指や腕と同じ要領で、ねじるように足の指から太ももにかけて3分程度行います。
④頭
こめかみから額にかけて小さな動脈がたくさん通っているので、手のひらを押し当てて円を描くように、頭から顔にかけて3分程度行います。